デジタル遺品整理業者の選び方 — 確認すべき5つのこと
「故人のパソコンやスマホをどうにかしたい。でも、どこに頼めばいいのか分からない」。検索すると業者はいくつも出てきますが、書いてあることも料金の見せ方もばらばらで、そのままでは比べようがありません。
先にお伝えしたい結論は、業者は「良さそうかどうか」ではなく「確認できたかどうか」で選ぶということです。ホームページの印象や価格の安さは、契約後に起きることを教えてくれません。一方で、問い合わせの段階で聞けば分かることは、思ったより多くあります。
この記事では、契約する前に確認しておきたい5つのことを、そのまま質問できる形で整理します。費用そのものの目安はデジタル遺品整理の費用で扱うため、ここでは金額ではなく「何を、どう確かめるか」に絞ります。
1. 対応範囲 — その業者は何をする会社か
最初につまずきやすいのがここです。「デジタル遺品」という言葉を掲げていても、実際にやっている仕事は会社によって別物です。大きく分けると次の3つで、必要な設備も資格も違います。
- 壊れた機器・起動しない機器から中身を取り出したいデータ復旧を専門にしている事業者
- 家財ごと片づけたい、機器を処分したい遺品整理や不用品回収を行う事業者
- どこに何の契約や資産があるか分からない端末やアカウントの調査に対応する事業者
「すべて対応できます」と書かれている場合でも、どの作業を自社で行い、どこから先を別の会社に回すのかは聞いておく価値があります(この点は3で扱います)。
もうひとつ、機器や家財の処分まで頼む場合は許可の確認が要ります。環境省は、家庭の廃棄物を回収するには市区町村の「一般廃棄物処理業許可」や委託が必要であり、「産業廃棄物処理業の許可」や「古物商の許可」では回収できないと案内しています。処分を含めて依頼するなら、その業者がどの許可で作業しているのかを確認してください。
なお、故人名義の口座の名義変更や解約といった手続きそのものは、業者の仕事ではありません。手続きは各金融機関やサービス提供元の相続窓口で行うもので、業者に頼めるのは「その手前」——資産の手がかりを探したり、データを取り出したりする部分です。全体の順番はデジタル遺品整理のやることリストにまとめています。
2. 見積もりと料金体系 — 書面で出るか
国民生活センターは、遺品整理サービスについて「高額な追加料金が発生した」「処分しない予定の遺品が処分された」といった相談が寄せられているとして、2018年7月に注意喚起を公表しています。同資料では、具体的な作業内容や費用単価が記載されていない書面が交付されていたり、そもそも契約書面すら交付されていなかったりするケースもあるとされています。

同センターが挙げているのは、「複数社から見積もりを取るなど、事業者の選定は慎重に行いましょう」「作業内容や費用を明確に出してもらうなど、見積書の内容を十分に確認しましょう」といった呼びかけです。見積もりの段階で聞いておくことを、答えを書き留められる形にすると次のようになります。
- 書面で出るか口頭の概算ではなく、作業内容と費用の内訳が書かれた見積書をもらえるか
- 追加費用が出る条件どういうときに、いくら増えるのか。上限はあるのか
- うまくいかなかったときの扱いデータを取り出せなかった場合に、料金がどうなるのか
- キャンセル料いつから、いくら発生するのか。契約前に金額を確認できるか
- 見積もり自体の費用出張料・見積料・診断料がかかるかどうか(業者を呼ぶ前に確認)
最後の項目も忘れずに確認してください。国民生活センターも、見積もりの際に出張料や見積料などの名目で料金を請求される場合があるとして、事業者を呼ぶ前に見積もりで料金が発生するのか否かを確認するよう促しています。また、見積金額が他より低いことだけを理由にすぐ契約せず、サービス内容と料金が自分の要望と合っているかを検討することも挙げられています。
見積もりのために自宅へ来てもらった事業者とその場で契約した場合は、特定商取引法の訪問販売にあたり、クーリング・オフができる場合があります。消費者庁は訪問販売について、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、書面または電磁的記録で申込みの撤回や契約の解除ができると案内しています。ただし、はじめから自宅で契約を締結することを消費者の側から請求した場合は適用の対象外とされる点に注意してください。契約をめぐって困ったときは、消費者ホットライン「188」で最寄りの消費生活センターに相談できます。
3. 個人情報・データの取り扱い — 作業のあとどうなるか
ここは誤解されやすいところです。個人情報保護委員会は、個人情報保護法は「個人情報」を生存する個人に関する情報に限っており、死者に関する情報については保護の対象とはならないと説明しています。ただし同時に、死者に関する情報が生存する遺族などに関する情報でもある場合には、その遺族などに関する「個人情報」となるとも説明しています。
つまり、保護の対象外とされているのは故人本人に関する情報であって、故人のデータのすべてではありません。故人の端末に残っているメールや連絡先、写真には、やり取りをしていた相手、登録されているご友人、写っているご家族——いま生存している方の情報も一緒に入っています。「故人のデータだから個人情報保護法の話ではない」とは言えない、ということです。
そのうえで、預ける相手がデータをどう扱うかは、契約でどう取り決めるかが重要になります。同委員会も、生存する個人と死者に関する情報を一体的に管理しているような場合には、死者の情報についても漏えい等しないよう適切に管理することが望ましい取組だとしています。だからこそ、預ける前に次の点を確認しておく意味があります。
- 守秘義務が契約に書かれているか口頭の約束ではなく、契約書や約款に条項があるか
- 作業後のデータの扱い作業用に複製したデータをいつ消すのか。消去したことを知らせてもらえるか
- 中身を見る範囲どこまで閲覧するのか。見た内容を報告書に書くのか
- 再委託の有無別の会社に作業を回すことがあるか。ある場合、同じ条件が守られるか
- 作業の記録誰が、いつ、何をしたのかが記録として残るか
とくに再委託は、こちらから聞かないと分からないことがあります。窓口になった会社と、実際に機器を開けて作業する会社が別、という形もあります。それ自体が悪いわけではありませんが、自分が誰に預けたことになるのかは知っておくべきです。
4. 作業場所と返却 — どこで作業し、いつ戻るか
デジタル遺品の作業は、機器を預けて行う形が多くなります。手元から離れている時間が生まれるということであり、ここでの確認は「預ける前」にしかできません。
- 1預けるときに受領証をもらう
何を、いくつ、どんな状態で預けたのかを書面に残します。本体だけでなく、ケーブル・SDカード・付属品まで含めて書いてもらいます
- 2作業中の連絡方法を決める
進み具合をいつ、どのような手段で知らせてもらえるか。診断の結果、費用や作業内容が変わるときに誰へ連絡が来るのか
- 3返却の方法と費用を決める
持参・宅配・引き取りのどれか。送料や返送時の梱包、輸送中の破損時の扱いはどうなるのか
出張作業を選ぶ場合は、作業する部屋、立ち会いの要否、当日の作業人数を先に確認します。国民生活センターの資料には、残しておくよう伝えていた品が事業者に処分されてしまい、戻ってこないという相談例が紹介されています。同センターは「残しておく遺品と処分する遺品を明確に分けておく」こと、自分で運び出せない場合は作業員に分かるよう印をつけるなどして明確にしておくことを勧めています。
デジタル機器も同じです。処分してよい機器と、中身を確認するまで触ってほしくない機器は、作業が始まる前に物理的に分けておいてください。パソコン本体だけでなく、外付けHDD・USBメモリ・SDカード・古いスマートフォンのように、見た目では判断できないものほど紛れ込みやすくなります。
5. 説明の姿勢 — できないことを、できないと言うか
最後は数字にならない項目です。しかし実務では、ここがいちばん外れにくい判断材料になります。契約前のやりとりは、どの業者でも無料で観察できます。
とくに右列の最後——「できないことを、できないと言う」かどうかは重視してよい点です。デジタル遺品の作業には、機器の状態によってどうにもならない場面があります。それを先に伝える業者のほうが、結果として説明どおりに進みます。
なお、業者に相談する前に市販の復旧ソフトを試す方もいますが、機器の状態によってはかえって状況が悪化することがあります。使ってよい状況かどうかは復旧ソフトを使ってよいかの見分け方を確認してから判断してください。
5つを確認しても納得できなかったときは、無理に決めなくて大丈夫です。急ぐべきなのは機器の状態をこれ以上悪化させないことであって、契約を今日中に結ぶことではありません。
参考にした公式情報
この記事は、次の公式ページの記載にもとづいて作成しています(最終確認: )。手続きの内容は変更されることがあるため、実際に進める際は各公式ページで最新の案内をご確認ください。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法務・税務等の専門的な助言ではありません。個別の手続きについては各サービスの公式窓口や専門家にご確認ください。記事の内容は公開・更新時点の情報に基づいています。