デジタル遺品整理の費用 — 何で金額が変わるかと見積もりの見方
「デジタル遺品の整理を頼むと、いくらかかるのだろう」。見積もりを取る前に、だいたいの金額を知っておきたいと思うのは自然なことです。
先にお伝えすると、デジタル遺品整理には一律の相場がありません。同じ「デジタル遺品整理」という言葉でも、実際の作業は開く端末から写真をコピーするだけのこともあれば、壊れた機器からデータを取り出す、資産の手がかりを調べるところまで含むこともあり、作業の重さがまったく違うからです。
そこでこの記事では、金額そのものではなく、何によって金額が変わるのか、料金体系にはどんな型があるのか、見積もりのときに何を確認し、何を伝えればよいのかを整理します。どの事業者を選ぶかという判断はデジタル遺品整理の業者の選び方で扱います。
費用は「作業の重さ」と「作業の範囲」で決まる
費用を左右するのは、おおよそ次の2つです。
- 作業の重さ — 端末が開くのか、開かないのか、物理的に壊れているのか
- 作業の範囲 — 写真だけでよいのか、契約や資産の手がかりまで調べるのか
まず「重さ」です。機器が正常に動く状態でデータをコピーする作業と、異音がする・起動しない・水没したといった機器を扱う作業とでは、必要になる設備・部品・作業時間が変わります。パスワードが分からず中身を確認できない端末も、まず状態を調べるところから始まるため、単純なコピー作業とは別の内容になります。
どの作業がいくらになるのかは、事業者ごとに定められています。作業の内容が変われば金額の前提も変わる、という関係をおさえておけば、見積書を見比べるときの手がかりになります。
次に「範囲」です。写真や連絡先を取り出すだけなら作業は限られますが、ネット銀行や証券口座、サブスクの契約先などの手がかりまで探す場合は、調べる対象そのものが増えます。何をどこまでやってもらうのかが決まっていないと、金額も決まりません。作業の全体像はデジタル遺品整理のやることリストで確認できます。
「相場」を覚えるより、内訳を出してもらう
参考になる公的な調査があります。総務省行政評価局が令和2年3月にまとめた調査結果です。これは家財の整理・処分を行う遺品整理サービスを対象とした調査で、デジタル遺品を扱う事業者の料金調査ではありませんが、見積もりの取り方については共通して参考になります。この調査は、実施の理由として遺品整理サービスに「業法」がなく情報が限られていることを挙げています。
同じ調査では、協力を得られた遺品整理事業者69社のうち63社が見積書を作成している一方で、見積りの出し方は事業者によって様々で、諸項目を積算して見積もる例もあれば、「○○一式」と見積もる例など内訳が不明なものもあるとされています。契約書を取り交わしているのは69社のうち43社だった、という結果も示されています。
つまり、相場を覚えることに意味は乏しく、自分の状況がどの作業にあたるのかを把握し、内訳を出してもらうほうが確実です。
料金体系にはいくつかの「型」がある
金額そのものより先に、どういう仕組みで料金が決まる契約なのかを確認します。

- 出張料・見積料見積もりを取る段階で料金が発生するのかどうか。事業者を呼ぶ前に確認します
- 初期診断料機器の状態を調べる段階で費用がかかるのか、その費用は作業を依頼しなかった場合にも発生するのか
- 成功報酬と不成功時の扱いデータを取り出せなかった場合に費用がどうなるのか。あわせて、何をもって「取り出せた」とするのかも確認します
- 作業費以外にかかるもの交換部品、データを納めるHDDやUSBメモリなどの保存メディア、機器の送料が別に必要になる場合があります
国民生活センターは、遺品整理サービス(物の整理・処分)に関する注意喚起の中で、見積もりの際に出張料や見積料などの名目で料金を請求される場合があるとして、事業者を呼ぶ前に、見積もりにあたって料金が発生するのか否かを確認するよう呼びかけています。デジタル遺品を扱う依頼でも、この確認は同じように役立ちます。
なお、料金体系は事業者ごとに定められており、名前が同じでも中身が違うことがあります。「診断は無料」「不成功なら無料」といった説明を見かけたら、その無料がどこまでを指すのかを、契約前に文字で確認してください。
見積もりのときに確認したいこと
急いでいるときほど、その場で決めてしまいがちです。ただ、デジタル遺品の作業は一度きりで、やり直しがきかないものが多くあります。金額と作業範囲を書面で受け取ってから決めても、遅くはありません。
見積もりを正確にするために、先に伝えたいこと
分かる範囲で伝えておくと、見積もりの前提をそろえやすくなります。次の内容をメモにして渡すと、話が早く、金額のぶれも小さくなります。
- 機器の種類と台数パソコン(WindowsかMacか、ノートかデスクトップか)、スマートフォン、外付けHDD、USBメモリ、SDカードなど
- いまの状態電源が入るか、画面が出るか、異音がするか、水にぬれたか、落としたか。見たままを伝えます
- 取り出したいもの写真や動画だけでよいのか、契約や口座の手がかりまで必要なのかで、作業の範囲が変わります
- これまでに試したこと電源の入れ直し、市販の復旧ソフトの使用など。言いにくくても、状態の判断に必要な情報です
- 期限の有無相続の手続きなどで期日がある場合は、最初に伝えます
とくに「これまでに試したこと」は正直に伝えてください。故障が疑われる機器では、通電を繰り返したり自己流の操作をしたりすることで状態が悪化し、その分だけ作業が重くなることがあります。異音がする機器の扱いは外付けHDDから異音がするときの対処にまとめています。
「安いほう」を選ぶ前に
見積もりが2社そろっても、そのまま金額を比べることはできません。作業範囲が違えば金額が違うのは当然だからです。同じ条件を伝えたうえで、同じ範囲の見積もりを比べる——これが比較の前提になります。
もうひとつ、混同しやすい点があります。デジタル遺品整理の費用と、相続の手続きそのものにかかる費用は別のものです。金融機関での相続手続き、名義変更、税の申告などは、それぞれの正式な窓口や専門家の領域になります。国民生活センターも、ネット上の資産は本人以外が実態を把握することが難しく、実店舗のない事業者では郵送でのやりとりなどにより、手続き完了までに時間を要することがあると指摘しています。調べる作業と、手続きそのものは別と考えて、費用も分けて見積もっておくと予定が立てやすくなります。
費用の話は、金額を調べるところからではなく、自分の手元にある機器がどの状態にあるのかを整理するところから始まります。状態と希望が言葉になっていれば、見積もりは正確になり、比較もできるようになります。
参考にした公式情報
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