故人が暗号資産を持っていたかも — 痕跡の探し方と注意点
「父はビットコインを持っていたらしい」。そう聞いたことはあるけれど、どこにいくらあるのかは誰も知らない——暗号資産(仮想通貨)の相続は、「持っていたかどうかも分からない」という地点から始まることがあります。
先にお伝えすると、暗号資産は紙の通知が届かないことがあり、手がかりは端末やメールのほか、銀行の入出金の記録、郵便物、USB型の機器、紙のメモなど、いくつかの場所に分かれて残ります。探す場所そのものは、おおむね決まっています。順に見ていけば「あったのか、なかったのか」の見当はつけられます。
一方で、正直にお伝えしなければならないこともあります。取引所を使わずにご本人が自分で管理していた場合、復元のための情報が残っていなければ、ご遺族でも取り出せないことがあります。この記事では、痕跡の探し方、見つかったときの進め方、そして見つけた情報を扱うときの注意点を整理します。
まず探す:手がかりが残る主な6か所
端末が開けるなら、メールから始めるのが効率的です。上の図の6か所を順に確認していきます。
1. 取引所(暗号資産交換業者)からのメール
口座が開設されていれば、本人確認の完了通知、取引ごとの通知、年に一度の取引報告書の案内などがメールで届いていることがあります。「暗号資産」「仮想通貨」「ビットコイン」「取引報告」「入金」といった語で検索してみてください。受信トレイだけでなく、迷惑メールフォルダやアーカイブ、そして複数のメールアドレスを対象にします。
2. スマートフォン・パソコンの中
ホーム画面やアプリ一覧に、取引所のアプリが入っていないかを確認します。あわせて、ブラウザのブックマークや閲覧履歴に、取引所のサイトが残っていないかも手がかりになります。パソコンのデスクトップや書類フォルダに、取引記録のファイルや画面の保存画像が残っていることもあります。
この段階で確かめたいのは「口座があったかどうか」だけです。故人のアカウントにログインしたり、そのための情報を探したりする必要はありません。ログインは利用規約に反するおそれがあります。また、端末を初期化・解約すると手がかりごと失われるため、そのまま保管しておいてください。
3. 郵便物・保管されている書類
引き出しや書類ファイルに、見覚えのない事業者名の郵便物や封筒が残っていないかを確認します。事業者から書面が届いていれば、そこに社名と連絡先が記載されています。故人あての郵便物は、しばらくの間まとめて保管しておくと、後から見返す手がかりになります。
4. 銀行口座の入出金
通帳やネット銀行の明細に、見覚えのない事業者名の入金・出金がないかを確認します。暗号資産の売買では銀行口座との間で日本円をやり取りするため、取引所名や運営会社名が入出金の記録に残っていることがあります。ネット銀行そのものの探し方は故人のネット銀行口座の探し方をご覧ください。
5. USB型の機器(ハードウェアウォレット)
USBメモリに似た小さな機器で、暗号資産を取引所に預けずに自分で管理するために使われます。引き出しや金庫から見慣れないUSB型の機器が出てきたら、捨てずに保管しておいてください。
6. 紙のメモ(復元用の語句)
英単語がいくつも並んだメモや、「recovery」「seed」などと書かれた紙やカードが出てきたら、ウォレットを復元するための語句(シードフレーズ)である可能性があります。これは資産そのものを動かせてしまう情報です。扱いは後の章の注意に従ってください。
- 事業者の名前メール・アプリ・郵便物・入出金の記録に出てきた社名を書き出します
- 登録に使っていたメールアドレス窓口に問い合わせるときの手がかりになります
- 端末そのもの初期化・解約をせず、そのまま保管します
- 紙のメモやUSB型の機器中身を読み込んだり操作したりせず、そのまま保管します
見つかったものによって、次にやることが変わります
ここまでで出てきたものによって、進め方が分かれます。

- 国内の取引所の口座が見つかったその事業者の公式サイトで相続の手続きを確認し、窓口に連絡します(次の章)
- USB型の機器や紙のメモが見つかった動かさず保管し、扱いが分かる専門家に相談してから触ります
- 痕跡はないが、生前に話していた端末とメールをそのまま保全し、調査を専門業者に相談します
- まったく手がかりがない他の相続財産の調査と合わせて確認し、結論を急ぎません
国内の交換業者に口座があった場合
日本では、暗号資産の交換サービスを事業として行うには金融庁・財務局への登録が必要です。金融庁は登録を受けた事業者の一覧を公表しており、あわせて無登録で勧誘を行う事業者への警告の一覧も掲載しています。まずは見つかった社名が登録一覧にあるかを確認してください。
次に、その事業者の公式サイトで、口座名義人が亡くなったときの手続きについての案内を探してください。ご遺族が直接ログインして操作するのではなく、各社の窓口に連絡して正式な手続きに乗せるのが原則になります。必要な書類・手続きの流れ・所要期間は事業者ごとに異なりますので、各社の案内でご確認ください。案内が見当たらないときは、公式サイトに記載された問い合わせ先に、相続の手続きについて直接おたずねください。
取引所を介さず自分で管理していた場合
取引所に預けず、ご本人の端末やハードウェアウォレットで管理していた場合、状況は大きく変わります。この形では、資産を動かせるのは復元用の語句や鍵となる情報を持っている人だけで、問い合わせ先となる会社が存在しません。そのため、再発行を依頼することもできません。
つまり、復元のための情報が見つからなければ、ご遺族であっても取り出せないことがあります。これは手続きの不備ではなく、暗号資産の仕組みそのものによるものです。「どんな状態でも取り戻せる」と言い切る相手がいれば、まずその主張を疑ってください。
見つかった機器やメモは、それ自体が資産に直結します。無理に操作せず、保管したうえで、相続に詳しい専門家や対応できる業者に状況を伝えて相談するのが安全です。
復元用の語句とパスワードの扱い
暗号資産をめぐる詐欺は、公的機関が繰り返し注意を呼びかけています。警察庁は、SNSなどで知り合った面識のない相手から暗号資産を求められた場合は詐欺を疑い、すぐに家族や警察に相談するよう呼びかけています。国民生活センターにも「出金しようとしたら追加の入金を求められた」といった相談が寄せられており、いったん失った資金を取り戻すことは極めて難しいとされています。
相続の場面では、「亡くなった方の暗号資産を復元します」「手数料を払えば取り戻せます」といった申し出が近づいてくることがあります。次の対比を目安にしてください。
金融庁も、暗号資産を利用する際は登録を受けた事業者かどうかを確認するよう案内し、詐欺や悪質商法への注意を呼びかけています。相手から連絡が来た場合ほど、その社名が登録一覧にあるかを先に確かめてください。
評価額や税金は、専門家に任せてください
国税庁は、相続や遺贈によって暗号資産を取得した場合は相続税の課税対象になるとしています。ただし、いくらとして評価するか、申告が必要かどうかは、他の相続財産との兼ね合いで決まります。この記事では扱いません。評価と申告は税理士など税務の専門家に確認してください。
ご自身で進めるのが難しいのは、次のような場合です。
- 端末が開けない・起動しない — 手がかりを見る前の段階で止まっている
- メールも明細も量が多く、探しきれない — 調査そのものに時間がかかる
- 機器やメモが出てきたが、触るのが怖い — 誤操作で失う心配がある
- 相続の期限が迫っている — 財産の把握を急ぐ必要がある
ご相談いただいても、ロックされた端末を開けたり、本人確認を代行したりできるわけではありません。ご一緒にできるのは、端末や書類をそのまま保全したうえで手がかりを整理し、どの正規の窓口に何を問い合わせればよいかを決めるところまでです。
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参考にした公式情報
この記事は、次の公式ページの記載にもとづいて作成しています(最終確認: )。手続きの内容は変更されることがあるため、実際に進める際は各公式ページで最新の案内をご確認ください。
- https://www.fsa.go.jp/policy/virtual_currency02/index.html
- https://www.fsa.go.jp/policy/virtual_currency/index.html
- https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/250408/01.html
- https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20240123_1.html
- https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/virtual_currency_faq_03.pdf
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法務・税務等の専門的な助言ではありません。個別の手続きについては各サービスの公式窓口や専門家にご確認ください。記事の内容は公開・更新時点の情報に基づいています。